2026年、ビジネス環境は生成AIの本格導入とハイブリッドワークの定着により、大きな変革期を迎えています。
この変化に伴い、企業のITインフラの中核であるグループウェアと、それを支えるモバイルデバイス管理(MDM)の最適な組み合わせを見直すことが不可欠です。
本記事では、主要なグループウェアであるGoogle WorkspaceとMicrosoft 365を軸に、代表的なMDMツール「Microsoft Intune」「Jamf Pro」「CLOMO」の3製品を徹底比較し、最新の動向を踏まえた最適な選定ポイントを解説します。
この記事でわかること
・ AI時代とハイブリッドワークに対応する、最新デバイス管理の必要性
・ 2大グループウェア(Microsoft 365/Google Workspace)を軸としたMDMの基本構成
・ 主要MDMツール3選(Intune/Jamf/CLOMO)の強みと費用感の比較
・ 自社に最適なMDMを選定するための具体的なチェックポイント
2026年、なぜグループウェアとMDMの再選定が急務なのか?
現代のビジネス環境において、グループウェアとMDMの再選定が急務とされる背景には、主に2つの大きな変化が存在します。
一つは生成AIの業務利用が本格化したことによるセキュリティリスクの増大、もう一つはハイブリッドワークが標準的な働き方として定着したことによる端末管理の複雑化です。
これらの課題に対応し、生産性と安全性を両立させるためには、ITインフラ全体を見直す視点が求められます。
AI(Copilot/Gemini)の業務利用とセキュリティリスクの増大
Microsoft365のCopilotやGoogleWorkspaceのGeminiといった生成AIは、業務効率を飛躍的に向上させる一方、新たなセキュリティリスクを生み出します。
機密情報や個人情報がAIへの入力データに含まれることで、意図しない情報漏洩につながる可能性があります。
MDMを活用して、セキュリティポリシーに準拠したデバイスからのみAI機能へのアクセスを許可したり、データのコピー&ペーストを制限したりするなど、エンドポイントレベルでの厳格な統制が不可欠です。
リモートとオフィスのハイブリッドワークが標準化したことによる端末管理の複雑化
ハイブリッドワークの普及により、従業員は社内、自宅、外出先など様々な場所から、PC、スマートフォン、タブレットといった多種多様なデバイスを使用して業務を行います。
これにより、IT管理者は管理対象デバイスの所在や状態を正確に把握することが困難になりました。
MDMを導入することで、場所を問わず全てのデバイスに対してOSアップデートやセキュリティパッチの適用、セキュリティポリシーの徹底を遠隔から一元的に実行でき、管理の複雑化とセキュリティレベルの低下を防ぎます。
【2大潮流】Microsoft 365 vs Google Workspace 連携MDMの基本構成
2026年現在のMDMの基本構成は、利用しているグループウェアを基点とした2つの大きな潮流に分類できます。
一つは、Microsoft365のライセンスに統合され、Windowsデバイスと高い親和性を持つ「Microsoft Intune」を中核とする構成です。
もう一つは、Google Workspaceを利用しつつ、Apple製品に特化した「Jamf」やマルチOS対応の「CLOMO」など、専門性の高いサードパーティ製MDMを組み合わせる構成です。
Microsoft 365とIntuneによる統合管理がもたらす効率性
Microsoft365とMicrosoftIntuneを組み合わせる最大の利点は、ID管理基盤であるMicrosoftEntraIDを含めたシームレスな統合管理が実現できる点にあります。
ユーザーアカウント、アプリケーション、デバイスのセキュリティポリシーを単一のプラットフォームで管理できるため、運用効率が大幅に向上します。
特にWindowsデバイスに対しては、OSの展開から日々の構成管理、更新プログラムの適用まで詳細な制御が可能であり、Windows中心のデバイス環境を持つ企業にとって極めて親和性の高いソリューションです。
Google Workspaceと専用MDM(Jamf/CLOMO)を組み合わせることで得られる柔軟性
GoogleWorkspaceは、標準搭載のデバイス管理機能が基本的なものに限られるため、より高度なセキュリティや詳細なポリシー設定を求める場合は、専用のサードパーティ製MDMとの連携が一般的です。
この構成のメリットは、企業のデバイス環境に合わせて最適なMDMを選択できる柔軟性にあります。
例えば、MacやiPhoneが中心であればAppleデバイス管理に特化したJamfProを、多様なOSが混在する環境であればCLOMOのようなマルチOS対応ツールを選ぶことで、各プラットフォームの能力を最大限に引き出す専門的な管理が実現できます。
【2026年最新版】主要MDMツール3選の強みと費用感を徹底比較
ここでは、2026年現在の市場で主要なMDMツールである「Microsoft Intune」「Jamf Pro」「CLOMO」の3製品を取り上げます。
それぞれのツールが持つ独自の強み、適した利用シーン、そしてライセンス費用に関する考え方を比較し、自社の要件に最も合致する製品はどれかを見極めるための情報を提供します。
Microsoft Intune|Windows管理とコストパフォーマンスで選ぶなら
MicrosoftIntuneは、特にWindowsデバイスの管理において優れた機能を提供するMDMです。
Microsoft365の特定プランに含まれているため、対象ライセンスをすでに契約している企業にとっては追加コストなしで利用開始できる高いコストパフォーマンスが魅力です。
Microsoftの各種クラウドサービスとの連携もスムーズで、Windows中心のIT環境を持つ企業にとって第一の選択肢となり得ます。
Microsoft 365 Business Premium以上に含まれるライセンスの優位性
Intuneの大きなアドバンテージは、Microsoft365BusinessPremium、E3、E5といった主要な法人向けライセンスに標準で含まれている点です。
これにより、多くの企業が追加のライセンス費用を支払うことなく、高度なエンドポイント管理機能を利用できます。
グループウェアの導入と同時にデバイス管理基盤を構築できるため、IT投資の最適化と迅速なセキュリティ強化を実現します。
他のMDM製品を別途契約する場合と比較して、トータルコストを大幅に抑制できる可能性があります。
Windowsデバイスへの詳細なポリシー適用機能
Intuneは、Windows Autopilotを利用したPCのゼロタッチ展開や、BitLockerによるディスク暗号化の強制、Windows Update for Businessを通じた更新プログラムの適用タイミング制御など、Windows OSのライフサイクル全般にわたるきめ細かな管理機能を提供します。
PowerShellスクリプトを配布して高度な設定を自動化することも可能で、OS標準の機能と深く連携した、他のMDMツールでは実現が難しいレベルの詳細なポリシー適用が行えます。
Jamf Pro|Apple製品(Mac/iPhone)管理における圧倒的な機能性
JamfProは、Apple社のmacOS、iOS、iPadOSデバイスの管理に特化したMDMソリューションです。
Appleエコシステムに最適化されており、OSのリリース初日から新機能に対応するなど、他の追随を許さない高度な管理機能を提供します。
「Appleデバイスを本格的に管理するならJamfPro」と評価されるほど、クリエイティブ業界やIT企業など、Mac利用率の高い組織から絶大な支持を得ています。
Appleデバイスに特化した高度な設定と自動化の実現
JamfProは、AppleBusinessManagerと連携したデバイスの自動登録(AutomatedDeviceEnrollment)や、AppStoreにない独自アプリの配布、詳細な構成プロファイルによるセキュリティ設定の強制など、Appleデバイスの管理に求められるあらゆる機能を提供します。
特に、ポリシーやスクリプトを活用したソフトウェアの自動インストールや設定変更は強力で、IT管理者の手作業によるキッティング作業を大幅に削減し、運用工数の効率化に大きく貢献します。
Windowsは管理対象外という明確な注意点
JamfProを検討する上で最も重要な注意点は、管理対象がApple製品に限定されることです。
Windowsデバイスは一切管理できません。
そのため、社内に多様なOSのデバイスが混在している場合は、IntuneやCLOMOのような他のMDMツールと組み合わせて利用するか、管理対象をAppleデバイスに絞る必要があります。
ただし近年、Jamfはマルチプラットフォーム対応を強化しており、Android Enterpriseと連携したAndroidデバイスの軽量な管理(エンロールメント)に対応するようになりました。
この明確な専門性がJamfProの強みであると同時に、導入の前提条件を定義づける重要な要素です。
CLOMO|日本のビジネス環境に最適化されたマルチOS対応MDM
CLOMOは、株式会社アイキューブドシステムズが開発・提供する国産のMDMサービスです。
日本のビジネス慣行やニーズを深く理解した機能設計とサポート体制が特徴で、iOS、Android、Windowsといった主要なモバイルOSを単一のコンソールで一元管理できる利便性の高さから、業種や企業規模を問わず幅広く導入されています。
直感的な管理画面と手厚い日本語のサポート体制
CLOMOの大きな魅力の一つは、IT専任者でなくても直感的に操作できる、分かりやすい日本語の管理画面です。
マニュアルやサポートも全て日本語で提供されるため、導入時や運用中に問題が発生した場合でもスムーズに解決を図れます。
海外製品の場合に課題となりがちな言語の壁や時差を気にすることなく、国内拠点による迅速で手厚いサポートを受けられる点は、特にIT管理体制が限られる企業にとって大きな安心材料となります。
iOS・Android・Windowsを単一コンソールで一元管理できる利便性
多様なOSのデバイスが混在する環境において、OSごとに管理ツールを使い分けるのは非効率であり、管理の抜け漏れが発生する原因にもなります。
CLOMOは、スマートフォンで主流のiOSとAndroid、そしてビジネスPCで広く使われるWindowsに標準で対応しており、これら全てのデバイスを単一の管理画面から統合的に管理できます。
これにより、IT管理者は運用負荷を軽減しつつ、組織全体のデバイスに対して一貫したセキュリティポリシーを適用することが可能になります。
AI時代に必須!CopilotやGeminiを安全に利用するためのMDM設定
CopilotやGeminiといった生成AIツールの業務活用は、情報漏洩という新たなリスクと隣り合わせです。
MDMを利用してデバイスのセキュリティ状態を管理し、信頼できる安全な環境からのみこれらのAIツールへアクセスさせる仕組みを構築することが、AI時代のセキュリティ対策の基本となります。
「条件付きアクセス」でセキュアな環境からのみAIツール利用を許可する方法
MicrosoftEntraIDの「条件付きアクセス」とMicrosoftIntuneを連携させることで、AIツールへのアクセス制御を強化できます。
この仕組みを利用すると、「Intuneに登録され、かつ組織のセキュリティポリシー(OSが最新、暗号化が有効など)に準拠しているデバイス」からのみ、Copilotを含むMicrosoft365のサービスへのサインインを許可するといったポリシーが設定可能です。
これにより、セキュリティが不十分な個人所有デバイスやマルウェアに感染した端末からの情報漏洩リスクを効果的に低減させます。
端末のセキュリティ状態を監視するエンドポイント統制の重要性
MDMは、単に設定を配布するだけでなく、管理下にある各デバイスのセキュリティ状態を継続的に監視する役割も担います。
OSのバージョン、セキュリティパッチの適用状況、ウイルス対策ソフトの稼働状態、ディスク暗号化の有無などを定期的にチェックし、組織が定めたセキュリティ基準を満たしていないデバイスを「非準拠」として識別します。
非準拠と判断されたデバイスに対しては、ネットワークから自動的に隔離したり、社内リソースへのアクセスを制限したりすることで、リスクを未然に防ぐエンドポイント統制が重要です。
失敗しないMDMの乗り換え・導入に向けた実践的ガイド
MDMの導入や他社製品からの乗り換えを成功させるためには、ツールの機能比較だけでなく、自社の運用体制や将来の拡張性を見据えた計画的なアプローチが不可欠です。
ここでは、製品選定の具体的なチェックポイントから、移行時に発生しうる課題とその対策、そしてコスト算出の考え方まで、実践的なガイドを提供します。
自社に最適なMDMを選ぶための5つのチェックポイント
最適なMDMを選定するには、以下の5つのポイントを総合的に評価することが重要です。
管理対象OSと台数:自社で利用しているPCやスマートフォンのOS(Windows,Mac,iOS,Android)の種類とそれぞれの台数を正確に把握します。
必要な管理機能レベル:位置情報の取得やアプリの強制配信、デバイス機能制限など、自社のセキュリティポリシーを実現するために必須な機能は何かを明確にします。
グループウェアとの親和性:現在利用している、あるいは導入予定のグループウェア(Microsoft365,GoogleWorkspace)との連携がスムーズに行えるかを確認します。
サポート体制:日本語でのサポートが受けられるか、緊急時の対応時間はどうなっているかなど、自社のIT管理者のスキルレベルに合ったサポート体制かを見極めます。
コスト体系:ライセンス費用がユーザー単位かデバイス単位か、初期費用は発生するかなど、自社の利用実態に合ったコスト体系の製品を選びます。
既存環境からのデータ移行で発生しうる課題と対策
既存のMDMから新しいMDMへ乗り換える際には、いくつかの課題が発生します。
最大の課題は、管理下にあるデバイスを新しいMDMへ再登録する作業です。
多くの場合、従業員自身による操作や、IT管理者による再キッティングが必要となり、業務への影響や管理者の工数増大が懸念されます。
この課題を乗り越えるためには、対象者を絞った段階的な移行計画を立て、詳細な手順書を事前に用意し、ユーザーへの丁寧なアナウンスを徹底することが対策となります。
また、古いポリシー設定をそのまま移行するのではなく、この機会に設定内容を見直すことも重要です。
【コスト試算】ライセンス形態(ユーザー課金 vs デバイス課金)による費用の違い
MDMのライセンスコストは主に「ユーザー課金」と「デバイス課金」の2種類に大別されます。
ユーザー課金は、1人の従業員がPCやスマートフォンなど複数のデバイスを利用する場合に適しており、ユーザー数に基づいて費用が計算されます。
一方、デバイス課金は、工場や店舗の共有端末のように、不特定の複数人が1台のデバイスを共同で利用するシーンに適しており、デバイス台数に基づいて費用が決まります。
自社の従業員の働き方やデバイスの利用形態を分析し、どちらの課金体系がトータルコストを抑えられるかを慎重に試算することが求められます。
2026年のMDM・グループウェアに関するよくある質問
ここでは、2026年現在の動向を踏まえ、MDMやグループウェアの選定に関して頻繁に寄せられる質問とその回答をまとめました。
Microsoft 365とGoogle Workspace、結局どちらの環境でMDMを構築すべき?
WindowsPCが業務の中心で、Officeアプリケーションを多用する企業であれば、MicrosoftIntuneとの親和性が極めて高いMicrosoft365環境が管理効率の面で優れています。
一方で、Webアプリケーション中心の業務が多く、OSに依存しない柔軟な働き方を重視するなら、GoogleWorkspaceと専門MDMを組み合わせる構成が適しています。
WindowsとMacが混在する環境に最適なMDMツールはどれですか?
WindowsとMacが混在する環境では、両方のOSを管理できるマルチOS対応のMDMが基本となります。
Microsoft IntuneもMac管理機能を提供していますが、より高度で詳細なMac管理を求める場合は、IntuneとJamf Proを併用するか、CLOMOのように単一ツールで両OSを一元管理できる製品を選択するのが現実的な解決策です。
MDMの導入や移行にかかる費用と期間の具体的な目安は?
費用は、月額のライセンス料に加え、数万円から数十万円程度の初期設定支援費用がかかるのが一般的です。
期間は、管理するデバイスの台数やポリシーの複雑さによって大きく変動し、小規模な新規導入であれば1ヶ月程度、数百台規模の既存環境からの乗り換えでは、綿密な計画と検証を含めて3ヶ月以上を要する場合もあります。
まとめ
2026年における最適なMDMの選定は、単なるツール選びにとどまらず、生成AIの活用やハイブリッドワークといった新しい働き方を前提とした、企業のITセキュリティ戦略そのものを左右する重要な意思決定です。
Microsoft365とIntuneによる統合管理の効率性をとるか、GoogleWorkspaceと専門MDMの組み合わせによる柔軟性をとるか、あるいは国産MDMのサポート力を評価するかは、自社が利用するデバイスのOS構成、グループウェア、そして求める管理レベルによって異なります。
本記事で解説した各ツールの強みや選定ポイントを参考に、自社のIT環境とビジネス戦略に最も合致した構成を見極めることが重要です。